おかげさまで、創立70周年。

一般社団法人 愛知広告協会

2014年5月開催終了 第62回全広連名古屋大会

愛広協創立60周年記念プロジェクト
愛広協実践広告ワークショップ 実施報告

テーマ

「広告を仕事にする」

広告業界を目指す愛知県下の大学生・専門学校生を対象に、第一線で活躍する3名の講師による実習を交えた2日間の広告現場を学ぶ実践的な広告ワークショップ。

講座内では、課題テーマを提示し、実際にプレゼンテーションを行うコンペティションを実施します。

広告業界の"今"を知る広告ワークショップです。

平成25年11月16日(土)、12月7日(土)、13大学38名の学生が集まり、愛広協実践広告ワークショップが開催されました。ワークショップの第1講座で課題が提示され、第2講座で全員がプレゼンテーションを行ってもらうコンペティション(愛広協学生広告賞)を実施しました。第2講座出席の学生の方35名のプレゼンテーションは、それぞれに素晴らしい提案でした。3名の講師の方に審査をして頂き、6名の方が賞を受賞しました。

「愛広協実践広告ワークショップ」の実施概要

名称

愛広協創立60周年記念プロジェクト

愛広協実践広告ワークショップ―広告を仕事にする

主催

一般社団法人 愛知広告協会、公益社団法人 全日本広告連盟

協力

株式会社 新東通信

目的

広告業界を目指す人材の育成を目的とし学生を対象とした広告ワークショップ、講座内では実践的な明確なテーマを提示したコンペティションを実施する、広告業界の“今”を学ぶ講座の開設

講座概要

愛知県の学生を対象に公募し、第1線で活躍する3名の講師による2日間の広告の現場を学ぶ、実践的な広告ワークショップ。

講座内では、課題テーマを学生に提示し、自身の成果を実際にプレゼンテーションを行うコンペティション(愛広協学生広告賞)を実施。

 

第1講座:広告主、クリエーター3名より現在の広告業界の環境をレクチャー、

      3名の講師と学生とのディスカッションと課題テーマの発表

第2講座:プレゼンテーションの実施と3名の講師による講評

講師

・岩田 正一(いわた しょういち)

 株式会社新東通信 クリエイティブ・ビジネス担当 総合プロデューサー

・島崎 紘而(しまざき こうじ)

 味の素株式会社 理事 広告部

・須田 和博(すだ かずひろ)

 株式会社博報堂 エンゲージメントビジネスユニット エンゲージメントクリエィティブ局 部長

開催日時

第1講座
平成25年11月16日(土)9時50分~17時30分

 

第2講座
平成25年12月7日(土)9時50分~17時30分

受講生

愛知県、岐阜県下の大学生 38名(第1講座:38名、第2講座:35名)

受講生全員による課題解決コンペティション
―愛広協学生広告賞

課題テーマ

AJINOMOTO CookDo(2人前シリーズ)のコミュニケーション

  • 課題の解決方法(コミュニケーション提案または商品開発提案等)、成果物の様式、発表方法は自由。
  • プレゼンテーション時間:1人/8分
  • 審査員:講師3名
  • 贈 賞:グランプリ  1名
        準グランプリ 2名
        特別賞    3名

A) グランプリ

名古屋造形大学  3年 星野 綾加

星野綾加_プレゼンテーション.pdf
PDFファイル 2.9 MB

B) 準グランプリ

名古屋造形大学  3年 石井 結惟果

石井結惟果_プレゼンテーション.pdf
PDFファイル 601.8 KB

椙山女学園大学  3年 稲垣 沙耶

稲垣沙耶_プレゼンテーション.pdf
PDFファイル 1.6 MB

C) 特別賞

愛知県立芸術大学 3年 小林 知史

椙山女学園大学  3年 西尾 南香

金城学院大学   3年 兵藤 久美子

審査員講評

岩田 正一(株式会社新東通信 クリエィティブ・ビジネス担当 総合プロデューサー)

実学。まさに、その言葉を感じた「実践ワークショップ」でした。

課題のオリエンテーションをしっかり聞き、質問をする。人に取材をしたりお店を回ったり、調査・分析をする。そして、「目的」を定めて、「ターゲット」を設定し、「広告のテーマ」として、商品の特長を見つける。さらに、「広告のコンセプト」として、「どんな言葉」で、「どう見せるのか」というキーワードやキービジュアルが整理されている。第1回目の講義で学んだことを、第2回目のプレゼンテーションの場でいかせたことに驚きました。社会人が無くしがちな「素直さ」が「吸収力」となっていることに気づきます。

このような学生へ向けた「実学」が、広告の魅力や奥深さ、可能性を感じるためには有効だと思います。このワークショップ終了後に耳にした学生や大学の先生たちの言葉からも、いまの大学生に必要な機会だったといえそうです。学生のみなさん、広告業界でお待ちしています。

島崎 紘而(味の素株式会社 理事 広告部)

今回の企画は、広告業界を目指す人材の育成を目的としたワークショップ&一人で参加する厳しいコンペティションでした。

テーマは、味の素株式会社2人前「CookDo」の販促企画です。子供が手から離れた2人世帯や、若い夫婦の声に応えた品種をメジャーにして欲しいという願いです。

驚いたのは、皆さん自分で設定したターゲットにヒアリングをしていること。

また、身近な人に商品の認知や使用ニーズなどを聞いてまとめていることです。

グランプリを受賞した星野綾香さん(名古屋造形大学)は、複数の主婦に2人前「CookDo」の使用機会を聞いたところ、4人家族でもお弁当のニーズに応えられるとし、2人前でつくるお弁当をテーマに広告作品を制作してくれました。準グランプリの石井結惟果さん(名古屋造形大学)は、4人家族で2人前を2品作る提案を、同じく準グランプリの稲垣沙耶さん(椙山女学園大学)は、単身男性を狙って男の妄想に出てくる女子と一緒に食べる映像で勝負。35人のプレゼンは35通りの企画となり、感謝、感激、感動をいただきました。

須田 和博(株式会社博報堂エンゲージメントビジネスユニット エンゲージメントクリエィティブ局部長)

広告を仕事にする。に寄せて

まず、自分が大学生だった時のことを書きます。80年代後半の多摩美のグラフィック学科には「IBC(インターナショナル・ビジネス・コミュニケーション)」という名前の授業がりありました。なぜIBCという名前だったのか、今でもわかりませんが、その授業は、テーマ=お題を選んで、なんでもいいからネタ作ってクラスメートの前でプレゼンする、というものでした。クラスの大半はこれを苦手がっていましたが、須田はこの授業が大好きで、2〜3週に1回はネタを作ってプレゼンしていました。予想以上にウケる時も、予想したようにはウケない時もありましたが、そのウケる・ウケないの実感を得ることが何より勉強になりました。その授業で得たウケの実感値が、就職面接で多いに役に立ちました。 

企画をプレゼンするということは、ひとつには、そういうことです。目の前の相手に、理解してもらえる・もらえない、目の前の相手にウケる・ウケない。そのことに全力をかける。また、企画書自体が自走して、目の前の相手の奥にいる相手に、ウケる・ウケない、理解してもらえる・もらえない、そういうことも問われます。広告を仕事にしている人は、そういう吹きさらしの崖っぷちに、いつもいます。それを、楽しいと思えるかどうか。それが、ひとつめ。

 二つ目は、思いつくことに対する喜び。発見、発明、着想、仮説構築、そういったものが、文字通り「三度の飯より好き」で、昼飯ヌキ・夜飯ヌキ・睡眠ヌキでも、着想と定着それ自体を楽しめること。採用される・されない、理解される・されないは、さて置き、「いいこと思いついっちゃった!」ということそのものに、生きる意欲が湧くこと。思いついたことで、その先、膨大な困難が待っていても、思いつく喜びを絶対に捨てられない。

 この二つが好きな人は、「広告を仕事にする」に向いてる人です。業界は、一見厳しさを増し続けているように見えますが、可能性はむしろ過去50年よりも大幅に広がっています。若い皆さんが、「この仕事」は人生を賭けるに足る、という可能性を見いだしてくれることを期待します。上の2つが好きな人にとっては、悪い仕事ではないです。

前段が長くなりましたが、今回、皆さんにプレゼンしていただいた企画の数々に関する講評を、大きく3つの助言にまとめてお伝えします。

 

●いい企画とは、「自分」で「身のまわり」から発見した企画。

今回、印象に残り、かつ上位に入賞した企画の多くが、借りてきた知識ではなく、自分自身で身のまわりから発見したネタが元になっているものでした。

 星野さんの「おべんとう」は、実際40〜50代の主婦にヒアリングをおこなった中で見つけた使い方でしたし、石井さんの「おかずの品数を増やしたがる傾向」は、実母の「なんか寂しいかなーと思って」というクチグセからの発見でした。西尾さんの「ヌーベルシノワ」は、自分で「失敗するかも」しれないけど「やってみた」ものでしたし、兵藤さんは自分自身の生活を振り返って「人は一人のためには料理しない」と結論づけました。

 これが、大事。ものすごく、大事。最近の広告業界の言葉で「エスノグラフィ調査」といいますが、ユーザーの生活に密着して、一体となって観察する。また、ジブリの鈴木敏夫さんがいうところの「半径3mにすべての企画がある」も、同じことをいっていると思います。

 これに対して、借りてきた知識や、ただのデータの羅列は、何の説得力も持たず、何度か審査員に厳しいコメントをもらっていたのを、当日見ていたと思います。自分自身の「発見」や、借り物ではない「持論」を持つことは、何よりも大切です。結局、それでしか競争には勝てません。これからも、身のまわりを観察し、自分だけの発見や持論に磨きをかけていってください。

 
●一瞬で「わかる」ものが、「お客さん」も審査員も動かす。
データは読み込まないと、わからない。ロジックも注意深く、ちゃんと聞かないと、わからない。それに対して、絵は一瞬でわかります。いいコピーも、一瞬で読めて、深い意味まで伝わります。これを作るのが、「広告を仕事にする」人の仕事です。
売り場の雑踏の中、ノイジーなTV放送の中、あらゆる情報が均等に並ぶWEBの中で、通りすがりのユーザーに、一瞬で大事なことを伝えて、こっちを見てもらう。自分ごととして、検討してもらう。オリエンをもらってからプレゼンするまで、そして定着して世の中に出すまでの、長い長い思考やプロセスは、すべて、その「一瞬」のために、その一瞬で「理解してもらう」ためにあります。
 だから、「一瞬でわかるもの」を提示して欲しいです。一瞬でわかるようになるまで、練り込んで欲しいです。一瞬でわかってもらえなければ、負けです。これは、広告が相手にする世の中の「お客さま」でも、今回のような課題の「審査員」に対しても、同じです。
星野さんの「おべんとう」の雑誌広告も、石井さんの「ひひひ」の中吊り広告も、稲垣さんの「ククド美人」も、一瞬で見て「わかる」ものでした。「デザインする」というのは、そういうことだと思います。
わかってもらえるかな?本当に、わかってもらえるかな?そもそも、自分は何をわかってもらいたいのかな?それが「一言」で言えるとこまで詰め切れてるかな?それを、ずーっと自問自答してください。自問だけでは、ワケがわからなくなったら、通りすがりの友達や親に、訊いてみてください。「コレわかる?」って。案外、簡単なことです。それをやるか、やらないかで、結果はまるで変わります。
 
●表現する人は、「なぜその表現なのか?」を作りながらずっと考えるべし。
表現系の皆さんは、表現が好きだから、なんであれ表現したいでしょう。課題をもらったら、表現から考える人もいると思います。それは間違いではないです。まったく表現しないで、ずっと考えてるだけの人より、よほどいい。 デザイン系の人でコピーをチャンと書いてる人もいました。それも、すごくいいことだと思います。デザインの人はどんどんコピーを書くべきだと思います。
ただし、問題は「なぜ、その表現なのか?」を問わずに表現してしまうことです。コピーもそうでした。語感を優先してコピーらしく書いた結果、コンセプトとコピーがズレている例をいくつも見ました。表現系の皆さんは「いい表現」をすることが「学業の本分」だから、そこから逸脱する発想を持つことは難しいと思います。しかし、広告で重要なのは、表現自体の良し悪し以上に「何のための、その表現なのか?」というところです。
これは、美大にいる内は、とっても「わかりにくいこと」なのですが、ファインアートでは「表現は目的」ですが、広告では「表現は手段」なんです。だから、広告は目的のためには、いかなる手段をもとります。自分が描くより他人が描いた方が良ければヒトの手を借りるし、ヘタな表現の方が伝わるならヘタにするし、そもそも表現じゃどうしようもなければ表現じゃない手段も採用する。
とはいえ、表現系に在学している皆さんは、今はひたすら「表現」することに汗を流した方がいいと思います。それが他者と違う自分になることですし、いま表現を磨かなければ一生磨く機会はないかもしれません。ただ「なんとなく表現を定着する」のでなく、「なんでこの表現なんだろう?」ということを、やっぱり自問し続けて「言葉で説明できるように」しておいた方がいいと思います。
「言葉で説明できない表現もあるよ!」と、反論する人もいるかと思いますが、「言葉で表現を説明」して、クライアントにそれを買ってもらうのが「広告を仕事にする」人の仕事です。
以上、長くなりましたが、ご参考にしていただき、かけがえのない日々、学業に青春に邁進していただければと、思います。

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